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公正証書とは?種類・作成方法・活用シーンをわかりやすく解説

村田 誠一 / 更新:2026-06-20
離婚の養育費や遺言を「口約束で大丈夫かな」と不安に感じていませんか。結論から言うと、相手が払わないときに裁判なしで差押えまで進めたいなら、公正証書にしておくのが一番確実です。私は行政書士として12年、相続・遺言の現場で公証役場とやり取りしてきました。実務で見てきた判断材料を、費用と手順までまとめます。
  • 公正証書は、公証人が職務上作成する公文書です。
  • 強制執行の約束を付けておけば、裁判をせずに財産の差押えができます。
  • 作成手数料は公証人手数料令で定められ、目的価額に応じて段階的に決まります。
  • 公正証書の原本は、公証役場で20年間保管されます。
  • 2025年10月1日施行の改正で、公正証書は電子化の対象になります。

公正証書の結論

公正証書とは?  (No.195)
公正証書とは?  (No.195)

迷っているなら、離婚の取り決めと遺言は公正証書にしておくのが安全です。

理由はシンプルで、執行力と証明力が段違いだからです。私的な合意書だと、相手が支払いを止めたとき、まず裁判で「払え」という判決を取らないと差押えに進めません。

公正証書なら、強制執行を認める一文を入れておくことで、その手間を省けます。正直、ここがすべてと言ってもいいくらい大きい。

養育費や慰謝料のように「将来お金を払ってもらう約束」は、公正証書にしておくと、滞ったときに裁判を経ずに給与や預金の差押えへ進めます。

1 公正証書

公正証書は、公証人という法律の専門家が作る、信頼性の高い公的な書面です。

法務省は、公証人を「私人からの嘱託により、公正証書の作成などを行う」立場と説明しています。つまり、私たち個人や会社の依頼を受けて、公の立場で文書を作るのが公証人の仕事です。

普通の契約書との違いは「誰が作ったか」にあります。当事者だけで作った書面と違い、第三者である公証人が内容と本人確認を行うため、後から「そんな約束はしていない」ともめにくい。

1.公正証書とは

公正証書とは、公証人が職務上作成する公文書です。

主語と述語で言い切ると、上の一文に尽きます。e-Govに掲載されている公証人法を見ても、公正証書は公証人が法律に基づいて作成する文書として位置づけられています。

よく使われるのは、離婚に伴う金銭の取り決め、遺言、お金の貸し借り(金銭消費貸借)、土地や建物の賃貸借あたりです。私の実務では、遺言と離婚協議の二つが圧倒的に多い。

1-1 公証人とは

【弁護士が解説】公正証書の落とし穴
【弁護士が解説】公正証書の落とし穴

公証人は、手数料などの定められた料金だけを受け取り、それ以外の報酬は受け取れない、中立な専門家です。

法務省によると、公証人が受け取れるのは手数料・送達料金・登記手数料・日当・旅費に限られ、これ以外の報酬は受け取れません。だから「多く払えば有利な内容にしてくれる」といったことは起きません。

多くは裁判官や検察官、法務局長などを長く務めた法律実務の経験者です。実際にやり取りすると、文言の詰めの厳しさに毎回背筋が伸びます。

1-2 公証役場とは

公証役場は、公証人が執務し、公正証書の作成や認証の手続きを行う場所です。

全国の主要な街に置かれていて、駅から近い立地が多い。たとえば品川区には、JR目黒駅から徒歩3分の公証役場があります。

原則として予約制です。飛び込みで行っても、その場ですぐ作ってもらえるわけではないので、まず電話で日程を取るところから始まります。

2.公正証書の種類

公正証書は、内容によって大きく三つに分けられます。

当事者間の契約に関するもの、一人の意思表示に関するもの、そして事実を証明するものです。下に代表例を整理しました。

公正証書の主な種類と具体例
分類具体例
当事者間の契約に関するもの金銭消費貸借契約、離婚給付契約、賃貸借契約、売買契約
一人の意思表示に関するもの遺言、任意後見契約の前提となる単独行為など
事実を証明するもの事実実験公正証書(目で見た事実の記録)、各種の事実証明

2-1 当事者間の契約に関する公正証書

公正証書遺言の作り方の流れと費用
公正証書遺言の作り方の流れと費用

二者以上が交わす約束を、公証人が書面にするタイプが、最もよく使われます。

お金の貸し借り、離婚に伴う養育費や財産分与、不動産の賃貸借などが典型です。ここに「約束を守らなければ強制執行を受けても異議はない」という一文(執行認諾文言)を入れられるのが、この型の最大の強みです。

私が離婚の依頼を受けたとき、まずこの文言を入れるかどうかを確認します。入れないと、せっかく公正証書にしても差押えに直結しないからです。

2-2 嘱託人の単独行為に関連する公正証書

一人の意思だけで成り立つ行為を書面化する代表が、遺言公正証書です。

遺言は相手と契約するものではなく、本人の単独の意思表示です。だから当事者は本人一人。ただし証人2人が必要になります。

自分で書く自筆証書遺言と違い、公証人が関与するため形式不備で無効になるリスクをほぼ消せます。遺言の相談で私が公正証書を勧める一番の理由がこれです。

2-3 私権に関する事実についての公正証書

見聞きした事実そのものを記録に残すのが、事実実験公正証書です。

たとえば貸金庫の中身を開けて確認した内容、相続財産の現況、システムの動作状況などを、公証人が自分の五感で確かめて書面化します。

件数としては少ないですが、後で「あったはず・なかったはず」の争いを防ぎたい場面で効きます。私が扱った中では、相続財産の確認で使ったケースがありました。

3.公正証書を作成するメリット

公正証書を作成して、離婚後も安心できる毎日を
公正証書を作成して、離婚後も安心できる毎日を

最大のメリットは、裁判をせずに強制執行へ進める執行力が得られることです。

加えて、公証人が本人確認と内容確認をするため安全性が高く、公文書として証明力も強い。さらに「公的な書面で約束した」という事実が、相手に支払いを守らせる心理的な圧力にもなります。

ただ、正直に言うと、効果が偏っているのも事実です。執行力の有無が大きすぎて、他の利点はその付随物くらいに私は捉えています。

公正証書の主なメリット
メリット内容
執行力がある強制執行認諾文言があれば、裁判なしで差押えに進める
安全性が高い公証人が本人確認・意思確認を行い、原本は公証役場で20年間保管される
証明力が高い公文書として、内容の存在や成立を強く裏づけられる
心理的圧力が生じる公的な約束のため、相手が支払いを軽視しにくくなる

3-1 執行力がある

執行認諾文言の付いた公正証書があれば、相手が払わないとき、訴訟を起こさずに給与や預金を差し押さえられます。

これは私的な合意書には絶対にない効果です。合意書だと、まず裁判で勝って判決(債務名義)を取る必要があり、半年〜1年がかりになることも珍しくない。

養育費は十数年にわたる長い約束です。その間に支払いが止まる可能性を考えれば、最初に執行力を確保しておく価値は大きいと私は考えます。

執行力は自動では付きません。「直ちに強制執行に服する」という執行認諾文言を入れて初めて有効になります。離婚協議や金銭の取り決めでは、ここを必ず確認してください。

よくある質問

読者からよく聞かれる三つの疑問に、出典をもとに答えます。

法律行為に関する証書作成の基本手数料(目的価額別・一部抜粋)
日本公証人連合会の案内による。これとは別に正本・謄本の交付手数料などがかかる場合があります。
目的価額手数料の目安
5,000万円超〜1億円以下49,000円
1億円超〜3億円以下49,000円に、超過額5,000万円ごとに15,000円を加算
3億円超〜10億円以下109,000円に、超過額5,000万円ごとに13,000円を加算
10億円超291,000円に、超過額5,000万円ごとに9,000円を加算

正本・謄本の交付手数料は別途かかります。銀座公証役場の案内では、電子データでの正本・謄本交付は2,500円、紙は1枚300円とされています。

よくある質問

公正証書とは?
公証人が職務上作成する公文書です。離婚の養育費の取り決めや遺言、お金の貸し借りなどに使われ、強制執行を認める一文を入れておけば、相手が払わないときに裁判をせずに差押えへ進めます。
公正証書の費用は?
作成手数料は公証人手数料令で定められ、目的価額に応じて段階的に決まります。日本公証人連合会の案内では、5,000万円超1億円以下は49,000円です。これとは別に、正本・謄本の交付手数料(紙は1枚300円、電子データは2,500円など)がかかることがあります。
公正証書の始め方は?
まず公正証書に入れたい内容(案)を整理し、公証役場へ電話で予約します。当日は当事者が出頭して本人確認資料を提示し、公証人が内容を読み聞かせて確認します。問題なければ署名し、手数料を支払って正本・謄本を受け取ります。

作成の流れを一度つかめば、難しいものではありません。私の経験では、事前に案文と必要書類を揃えておくほど、当日の手続きは短く済みます。

  1. 公正証書に入れる内容(案)を作成し、必要な情報を整理する。
  2. 公証役場へ電話で予約し、案文と必要書類を事前に送って確認してもらう。
  3. 予約日に当事者が出頭し、本人確認資料を提示する(代理人による作成が認められる場合もある)。
  4. 公証人が内容を読み聞かせ、当事者が確認して署名する。
  5. 手数料を支払い、正本・謄本を受け取る。

弁護士は必須ではありません。内容が複雑だったり相手と対立していたりするなら、弁護士に依頼する意味は大きい。一方で、合意がまとまっている離婚や遺言なら、行政書士のサポートで案文を整えて公証役場に持ち込む形で十分対応できます。

なお、公正証書は2025年10月1日施行の改正で電子化の対象になります。細かい運用は変わりうるので、最新の取り扱いは法務省の改正法令や利用する公証役場で確認してください。

最後に一言。私が現場で一番後悔の相談を受けるのは「口約束で済ませてしまった」ケースです。費用と手間は確かにかかりますが、将来の差押えという保険を考えれば、離婚と遺言だけは公正証書にしておく——これが私の率直な結論です。

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村田 誠一

行政書士(相続・遺言専門) ・ 公正証書遺言の作成サポート実務経験あり
行政書士歴12年

行政書士として相続・遺言業務に長年携わり、公証役場との実務連携を通じて得た一次情報をもとに、読者が実際に動けるよう具体的な手順と費用を丁寧に解説します。

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