自筆証書遺言とは?公正証書遺言との違いやメリットを解説
- 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で書き、押印して作成する遺言です。
- 2019年1月13日以降、財産目録だけはパソコン作成や代筆が認められています。
- 公証人の関与が不要で、作成費用はほぼゼロから始められます。
- 形式の不備があると無効になるため、要件を一つでも欠かさないことが最優先です。
- 2020年7月10日開始の保管制度を使うと、家庭裁判所の検認が不要になります(手数料は1通3,900円)。
自筆証書遺言の結論

自筆証書遺言は、費用をかけずに自分一人で作れる代わりに、要件を一つでも欠くと無効になる遺言方式です。
法律上、遺言の全文・日付・氏名を自書し、押印することが必要です。財産目録に限ってはパソコン作成や代筆ができます。
私の率直な意見を言うと、財産が単純で相続人も少ないなら自筆証書遺言で十分です。ただし、不動産が複数あったり、相続人同士の関係が複雑だったりするなら、公正証書遺言を勧めます。無効リスクと紛争リスクが段違いだからです。
自筆証書遺言書保管制度について
自筆証書遺言書保管制度は、書いた遺言を法務局が預かってくれる制度で、2020年7月10日に始まりました。
この制度では、遺言書の原本だけでなく画像データも法務局で保管されます。これが地味に大きい。自宅の引き出しにしまっておくのとは安心感が違います。
保管された遺言は、原本を死亡後50年間、画像データを150年間管理します。手数料は保管申請1通あたり3,900円です。
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 遺言書の保管申請 | 1通 3,900円 |
| 遺言書保管事実証明書 | 1通 800円 |
| 遺言書情報証明書 | 1通 1,400円 |
申請には事前予約が必要で、遺言者本人が法務局へ出向きます。代理人に任せることはできません。顔写真付きの本人確認書類や住民票の写しなどを持参します。
お知らせ
保管制度を使った自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要になります。これは制度開始時に最も注目された点です。
通常の自筆証書遺言は、相続が始まると家庭裁判所で検認という手続きを経る必要があります。検認とは、遺言の状態を裁判所が確認し記録する手続きのことです。相続人全員に通知が行き、完了まで数週間かかることもあります。
保管制度を使えば、この手間が丸ごと省けます。残された家族の負担を減らしたいなら、利用する価値は十分あります。
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保管の手続きは、自宅や本籍地、所有する不動産の所在地を管轄する法務局でのみ受け付けられます。
どこの法務局でもよいわけではない点に注意してください。事前予約は法務局手続案内予約サービスや電話で行います。当日いきなり行っても受け付けてもらえません。
私が相談を受けたケースでも、予約を取らずに法務局へ行ってしまい、出直しになった方が何人かいました。仕事を休んで行く方も多いので、ここは必ず先に予約してください。
1.自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自分で手書きし、押印して作成する遺言のことです。
公証人や証人を必要とせず、紙とペンと印鑑があればその日に作れます。費用がかからないのが最大の特徴です。
ただし、手軽さの裏返しで、書き方のルールを守れていないと無効になります。本文の記載ミスや方式違反があると、せっかく書いた遺言が一枚の紙切れになってしまう。ここが怖いところです。
1-1.公正証書遺言との違い
公正証書遺言は公証人が関与して作る遺言で、自筆証書遺言と違って無効になるリスクがほとんどありません。
両者の違いを整理します。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成者 | 遺言者本人が自書 | 公証人が作成 |
| 証人 | 不要 | 2人以上必要 |
| 作成費用 | ほぼかからない | 公証人手数料がかかる |
| 無効リスク | 形式不備で無効の恐れ | ほぼなし |
| 保管 | 自宅または法務局 | 公証役場で保管 |
正直に言うと、確実性だけを取るなら公正証書遺言です。費用と手間を惜しまないなら、こちらを選んでおけば間違いありません。自筆証書遺言は「手軽さ」と「無効リスク」のトレードオフだと考えてください。
1-2.秘密証書遺言との違い

秘密証書遺言は、内容を誰にも見せずに「遺言の存在だけ」を公証人に証明してもらう方式です。
自筆証書遺言は内容も存在も自分だけで管理しますが、秘密証書遺言は公証人と証人が関与して存在を証明する点が違います。
ただ、実務で秘密証書遺言を勧めることはほとんどありません。内容を公証人がチェックしないため、結局は形式不備で無効になるリスクが残るからです。手間がかかる割に得るものが少ない。私は基本的に選択肢から外しています。
2.自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言の最大のメリットは、費用をかけずに、内容を誰にも知られずに作れることです。
公証人や証人が不要なので、思い立ったその日に作成できます。書き直しも自由です。
2-1.作成費用を抑えられる
自筆証書遺言は、作成そのものに費用がかかりません。
必要なのは紙とペンと印鑑だけ。公正証書遺言で発生する公証人手数料がいらないのは、大きな利点です。
ただし、保管制度を使うなら1通3,900円がかかります。それでも全体としては安く済みます。
2-2.遺言の内容を誰にも知られずに作成できる

自筆証書遺言は、内容を誰にも見せずに一人で完結できます。
公正証書遺言だと証人2人に内容を知られますが、自筆証書遺言ならその心配がありません。「誰に何を残すか」を生前に知られたくない方には向いています。
財産の分け方に差をつける場合など、内容を秘密にしておきたい事情があるときには、この点が効いてきます。
3.自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言の最大のデメリットは、形式の不備で無効になる恐れがあることです。
自分一人で作れる分、誰もチェックしてくれません。私が見てきた中で多いのは、日付を「令和6年1月吉日」と書いてしまうケース。日付が特定できず無効になります。
他にも、自宅に保管したまま家族に見つけてもらえなかったり、第三者に偽造・改ざんされたりするリスクがあります。これらは保管制度を使えばかなり解消できます。
正直、自筆証書遺言はメリットよりデメリットの管理が大事です。だからこそ要件を厳守し、書いたら法務局に預ける。この2点を守れば、デメリットの大半は消せます。
よくある質問
相談の現場でよく受ける質問を、想定される検索の言い回しのまま並べました。
よくある質問
最後に一言。遺言は「書いて終わり」ではありません。書いたものが確実に効力を持ち、家族に届くところまでが大事です。迷ったら、まず近くの法務局の保管制度から検討してみてください。
