遺言書の種類を比較|自筆・公正証書の違いと選び方を解説
- 民法上の普通方式の遺言は、自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類だけ。
- 公正証書遺言は公証人が作り、証人2人が立ち会い、家庭裁判所の検認が不要。
- 自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し押印すれば作れる、最も手軽な方式。
- 法務局の保管制度を使えば、自筆証書遺言でも検認が不要になり、保管手数料は1通3,900円。
- 秘密証書遺言は内容を秘密にできるが検認が必要で、実務ではほとんど使われない。
遺言書 種類 比較の結論

迷ったら、財産が大きく確実性を求めるなら公正証書遺言、費用を抑えてまず一通残したいなら法務局保管制度付きの自筆証書遺言を選べば失敗しません。
私は行政書士として12年、相続と遺言の現場に立ってきました。秘密証書遺言を実際に勧めたことは、正直ほとんどありません。理由は後で書きます。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 本人が自書 | 公証人が作成 | 本人(署名押印は必須) |
| 証人 | 不要 | 2人以上 | 2人以上+公証人1人 |
| 検認 | 原則必要(保管制度なら不要) | 不要 | 必要 |
| 費用の目安 | 保管制度利用で3,900円 | 目的価額に応じ算定 | 公証役場で11,000円 |
| 内容の秘密 | 保てる | 公証人と証人に知られる | 保てる |
1. 遺言書の主な種類と特徴
日本の民法では、普通方式の遺言は自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類と定められています。
この3つは「誰が書くか」「証人がいるか」「検認が要るか」で性格が大きく分かれます。実務で実際に使われるのは、ほぼ自筆証書と公正証書の2つです。
いずれの方式も、法律上の方式を満たさない遺言は無効になり得ます。形式のミスで一通まるごと使えなくなる、これが遺言の怖いところです。
2. 自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言です。
思い立った日に、紙とペンと印鑑があれば作れます。費用もかからない。これが最大の魅力です。
財産目録については、一定の要件のもとで自書以外(パソコン作成など)の方法も認められています。財産が多い人には地味にありがたい改正でした。
自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は、手軽さと引き換えに「無効になりやすい」「争いの種になりやすい」という弱点を抱えています。
日付が「令和7年3月吉日」では特定できず無効。押印を忘れて無効。こうしたつまずきを、私は何度も見てきました。
法務局保管制度を使わない場合、原則として家庭裁判所の検認が必要です。相続人が集まって裁判所に出向く、この手間が残された家族にのしかかります。
✔ 法務局での保管制度を利用すれば安全性アップ!
法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば、自筆証書遺言でも家庭裁判所の検認が不要になり、保管手数料は1通あたり3,900円です。
自宅保管だと紛失・改ざん・発見されないリスクがつきまといます。法務局に預ければ、その心配がほぼ消える。3,900円でこの安心が買えるなら、私は使わない理由がないと思っています。
ただし、法務局は形式チェックはしても内容の有効性まで保証してくれるわけではありません。中身の妥当性は自分で詰める必要があります。
3. 公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証人が作成し、証人2人以上の立会いのもとで作る、最も確実性の高い遺言です。
公証人という法律の専門家が関与するため、形式不備で無効になることがほぼありません。そして検認が不要です。
手数料は公証人手数料令に基づき、目的の価額などで決まります。たとえば目的価額が100万円以下なら5,000円、200万円以下なら7,000円、500万円以下なら11,000円。この手数料は受遺者ごとに算定されます。
| 目的価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
公正証書遺言の特徴

公正証書遺言の最大の強みは、検認不要で、原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんの心配がない点です。
デメリットは、費用と手間。財産が多ければ手数料も上がり、証人2人を用意し、公証役場とのやり取りも発生します。
正直に言うと、私はある程度の財産があり相続人が複数いる方には、迷わず公正証書遺言を勧めます。後の揉め事を防ぐ保険として、費用に見合う価値があるからです。
デジタル遺言
いわゆる「デジタル遺言」は、現時点で民法上の普通方式の遺言として確立した制度にはなっていません。
パソコンで作った文書をそのまま遺言にできる、と誤解している方がいます。自筆証書遺言は本文の自書が原則で、財産目録など一部にパソコン作成が認められているにすぎません。
電子的な遺言制度の議論は進んでいますが、制度として使えるかは法務省など公的機関の最新情報を必ず確認してください。今、確実なのは紙の3方式です。
4. 秘密証書遺言とは?
秘密証書遺言とは、本人が作成した証書に署名押印し、公証人1人と証人2人以上の前で封紙に署名押印して提出する方式です。
内容を誰にも知られずに、その存在だけを公証人に証明してもらえる。これが秘密証書遺言の趣旨です。
公証役場での手数料は11,000円。ただし内容は公証人もチェックしないため、中身に不備があれば無効になり得ます。
秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要で、内容の有効性も保証されないため、実務ではほとんど使われません。
内容を秘密にできる点だけは魅力ですが、検認は必要、費用もかかる、しかも無効リスクは残る。メリットの薄さに対してデメリットが目立ちます。
私は12年の実務で、秘密証書遺言を積極的に勧めたことはほぼありません。秘密にしたいなら、内容を詰めたうえで法務局保管制度付きの自筆証書を選ぶほうが現実的です。
5. 家族信託と遺言の違い
家族信託は「生前から財産管理を任せる仕組み」で、「死後の財産の渡し方を決める」遺言とは目的が根本的に異なります。
遺言は亡くなった後に効力が生じます。これに対し家族信託は、元気なうちから、認知症などで判断能力が落ちた後も、信頼できる家族に財産の管理・運用を任せられる契約です。
認知症対策まで視野に入れたい、不動産や事業の管理を生前から託したい。そんなケースでは家族信託が向きます。一方、シンプルに「誰に何を遺すか」を決めるだけなら遺言で十分です。
私の感覚では、両者は対立するものではなく、組み合わせて使う場面も多いです。財産管理は信託で、最終的な承継は遺言で、と役割分担させるイメージです。
よくある質問
相談現場で実際に多い3つの質問に、端的に答えます。
よくある質問
最後にひとこと。遺言は「完璧な一通」を目指して動けなくなるより、まず形にすることが大事です。財産が大きい人は公証役場へ、まず一通残したい人は法務局保管制度へ。今日、財産の棚卸しから始めてください。
